モティメルNo.11『ハチドリとオウム』

森が燃えていました。
森の生きものたちは
われ先にと逃げていきました。
でも
クリキンディという名の
ハチドリだけは
いったりきたり
口ばしで水のしずくを
一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます。
動物たちがそれを見て
「そんなことをして
いったい何になるんだ」
といって笑います。
クリキンディは
こう答えました。

「私は
私にできることをしているだけ」
(「ハチドリのひとしずく」より)
———
ハチドリという鳥は
世界で1番小さな鳥で
全長6cm体重2gしかない。

この話は
南米エクアドルに伝わる短い話。
ハチドリのクリキンディが
「私は私に
できることをしているだけ」
というところで終わり
最後が書かれていない。

この物語の続きは読者が各々
考えるようになっている。

仏教にもこれに似た話で
「オウムの恩返し」がある。

一羽のオウムがエサを
探しながら道に迷い
奥山へ紛れ込みました。

日が暮れてあたりが
暗くなってきて
我が家の方向さえ分らず
途方に暮れていたとき
奥山の鳥や獣が出てきて

「オウムくん
気味は道を間違えたのだ。
君のところはずいぶん遠いから
今からでは帰れないよ。

明日送っていってあげるから
今夜は僕たちのねぐらへおいでよ」
と、親切に案内し
「ここに木の実もあるから
お腹いっぱい食べなさい。
ここにはおいしい水が流れているよ」
と教え
その上オウムくんが
寂しくてはいけないからと
皆でオウムの周りを
囲むようにして寝てくれました。

オウムは安心して
ぐっすり休むことができました。

晴れた翌朝
朝日に照らされながら
オウムは奥山の鳥や獣に
にぎやかに送られ
山から山を伝って
無事に古巣に
戻ることができました。

オウムは
この親切がうれしくてうれしくて
なりませんでした。

それから
数日たったある日
ふと気がついてみると
奥山のほうに山を包むほどの
煙が上がっているではありませんか。

オウムは
驚いて飛んでいってみると
奥山が大火事になっていました。

これを知るとオウムは
谷川に飛び込むと全身を
ぬらして飛び立ちました。

パラパラ水は落ちましたので
山火事の上まできて
体をふるった時は
二、三滴の水しか落ちませんでした。

でも
オウムはとびかえり
また谷川の水で体を
ぬらしてはとんで行き
火事の上で身をふって
二、三滴の水を落としました。
これを休みなく繰り返していました。

このとき
この有様を谷川のほとりの木の上で
さっきから見ていた他の鳥が
あざ笑うかのように言いました。

「オウムくん
君のもって行くその僅か
二、三滴の水で
あの大山火事が消えると思うのか
骨折り損のくたびれもうけとは
そういうことだ」
といいました。

このときオウムは
「私のもって行く水は僅かです。
あの大火事は消えないかもしれません。
でもあの火の中に
私をこの上なく親切にし
助けてくれた友だちが
いま苦しんでいるかと思うと
私は止めることはできません。
私は水を運びます」

といって
またせっせと水運びを続けました。

すると
一天にわかにかき曇り
大粒の雨がザーッ、ザーッ
と降り出し山火事も
たちまち消えてしまいました。

自分は行き詰った時
この2つの話をよく思い出す。

ハチドリのくちばしで運ぶ一滴の水
オウムの羽の二、三滴の水
あまりに小さすぎて
山火事を消すには
まったく無意味で非効率的に見える。

だから
もっと現実的で効果のある方法を
探して、さがして
他人にも訊きまくるが
見つからず結局何もしない。

しかし
一見遠回りに見えること
無意味に思えることでも
今の自分にできることを
必死にしていると
その姿に胸を打たれ
協力してくれる人が現れたり
天が動くような奇跡が起きる。

むしろ
ハチドリやオウムの方法以外に
山火事を消し去る手段はないと思う。

どんな大きな夢目標でも
小さな短期目標達成の
積み重ねなくして
実現させることは出来ない。

目標を設定し達成する。
そして又
設定し達成する。

この設定と達成の繰り返しが
奇跡を生み出す唯一の方法であり
最も確実で1番近道である
ということを
自分は信じて疑わない。
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